今回は、会社の宝・財産であり、会社運営に不可欠な従業員に関する助成金の有効活用についてです。
・せっかく縁あって雇用したのだから、できれば長く勤めてほしい…
・快適な職場は仕事の効率も上がるはず…
・資格取得すれば仕事の幅は広がるから、やる気がある人は応援してあげたい…
などなど、従業員を大切にし、会社の業績を上げたいと思う事業主の方は多いかと思います。
しかし職場の環境改善、資格取得支援と言っても、それぞれの制度の整備や実施は一朝一夕にできるものではありません。それなりに時間や高いコストもかかるため、導入に躊躇している事業主の方も多いのではないでしょうか。
そんな時、事業主の方のやりたいことと、交付要件がぴったり合う助成金があったら、申請せずにおくのはもったいないと思いませんか?
職場の環境改善、人事評価制度、資格取得支援など、実は意外なところに助成金が交付されるのです!
*助成金の財源は会社が納めている雇用保険料なので、要件を満たしている場合は積極的に申請しましょう!
数ある助成金の中からご自身が該当するものを探すのは大変
人材に関する助成金と言っても、助成金、コースは様々あり、ご自身がどれに当てはまるのか探し出すのは大変です。
今回は以下の3つをピックアップしましたので、パターン別にそれぞれ、要件、受給金額、申請方法などについて確認していきましょう。
さらに詳しく、また今回ご紹介する助成金以外の助成金、補助金について調べたい方は、以下のサイトから調べることもできますので、ぜひご活用ください。
パターン別、申請できる助成金を3つご紹介
※各助成金について、必ず要件などご確認ください。
企業が『有給教育訓練休暇制度』を整備・運用した後、従業員が資格取得のため休暇を取った場合→
企業が『雇用管理制度』を整備・運用して、離職率の低下を図った場合→
企業が生産性向上のための『人事評価制度』と、 2 %以上の賃金のアップを含む『賃金制度』を実施・整備した場合→
(1)人材開発支援助成金 教育訓練休暇付与コース
概要
有給教育訓練休暇制度を導入し、労働者が当該休暇を取得して訓練を受けた場合に助成
受給額
定額助成 30万円 ※生産性要件を満たす場合は36万円
受給要件
① 3年間の教育訓練休暇導入適用期間の間に企業全体の雇用する被保険者数(非正規等を含む)に応じて、下記表「企業規模別最低適用被保険者数」に定める数の被保険者にそれぞれ5日以上取得させる
雇用する被保険者 | 最低適用被保険者数 |
100人以上の場合 | 5人 |
100人未満の場合 | 1人 |
表『企業規模別最低適用被保険者数』
② 教育訓練休暇制度導入・適用計画期間の初日から1年ごとの期間内に1人以上の被保険者が当該休暇を取得する
※ ②で休暇を付与した被保険者数は①の最低適用被保険者数に含めることができます。
また、②の各年毎に休暇を取得した者は同一人物であっても構いません。
※ 時間単位で教育訓練休暇を取得した場合は取得時間の合計か、取得者の1日の所定労働時間分に達した場合に1日としてカウントされます。
受給までの流れ
① 制度導入・適用計画の作成・提出
◦教育訓練休暇制度を検討し、制度導入・適用計画(3年間固定)を作成してください。
◦制度導入・適用計画期間の初日から起算して、6カ月前から1カ月前までに必要な書類を事業所管轄の労働局に提出してください。
② 制度導入・周知
◦就業規則または労働協約への規定(制度の施行日を明記)
◦施行日までに就業規則または労働協約、事業内職業能力開発計画等を労働者に周知してください。
◦施行日までに労働基準監督署へ就業規則の届出をしてください。
③ 制度導入・訓練の実施
※支給申請には、制度導入・適用計画期間内に被保険者が教育訓練休暇を活用し、訓練を実施した実績が必要です。
④ 支給申請書の・提出
事業主が支給申請する場合は、制度導入・適用期間終了日(制度導入日から3年)の翌日から起算して2ヶ月以内(支給申請期間)に事業所の管轄労働局に提出してください。
⑤ 助成金の受給
生産性要件とは?
申請する事業所が次の方法で計算した「生産性要件」を満たしている場合に助成額を割増します。
助成金の支給申請を行う直近の年度における「生産性」が下記のいずれかに当てはまる場合
① その3年度前に比べて 6 %以上伸びていること
② その3年度前に比べて1 %以上(6 %未満)伸びていること(※)
(※)金融機関から一定の「事業性評価」を得ていること
◆「生産性」の計算式
「生産性」
= (営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)÷ 雇用保険被保険者数
具体的な計算は、「生産性要件算定シート」をダウンロードして計算しましょう。
- なお、生産性の算定要素である「人件費」について、「従業員給与」のみを算定することとし、役員報酬等は含めないこととしています。
- また、「生産性要件」の算定の対象となった期間中に、事業主都合による離職者を発生させていないことが必要です。
◆「生産性要件」を満たした場合の支給申請期限
それぞれのコースの支給申請時に申請しましょう。
(2)人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)
昨年度までは「職場定着支援助成金 雇用管理制度助成コース」でしたが、下記のように平成30年4月1日に「人材確保等支援助成金」に統合されました。
人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース、介護福祉機器助成コース、介護・保育労働者雇用管理制度助成コース)
~「職場定着支援助成金」、「人事評価改善等助成金」、及び「建設労働者確保育成助成金」の一部コースについては、平成30年度から「人材確保等支援助成金」へ統合されました~
出典:人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース、介護福祉機器助成コース、介護・保育労働者雇用管理制度助成コース) |厚生労働省
概要
事業主が、雇用管理制度の導入等による雇用管理改善を行い、離職率の低下に取り組んだ場合に助成
受給額
目標達成助成 57万円 ※生産性要件を満たす場合は72万円
受給要件
(1) 雇用管理制度整備計画の認定
次の①~⑤の制度の導入の雇用管理制度整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受けること。
① 評価・処遇制度
② 研修制度
③ 健康づくり制度
④ メンター制度
⑤ 短時間正社員制度(保育事業主のみ)
(2) 雇用管理制度の導入・実施
(1) の雇用管理制度整備計画に基づき、当該雇用管理制度整備計画の実施期間内に、雇用管理制度を導入・実施すること。
(3) 離職率の低下目標の達成
(1) 、(2) の実施の結果、雇用管理制度整備計画期間の終了から1年経過するまでの期間の離職率を、雇用管理制度整備計画を提出する前1年間の離職率よりも、下表に掲げる目標値(※)以上に低下させること。
※低下させる離職率の目標値は対象事業所における雇用保険一般被保険者数に応じて変わります。
対象事業所における 雇用保険一般被保険者 の人数区分 |
1~9人 | 10~29人 | 30~99人 | 100~299人 | 300人以上 |
低下させる離職率 (目標値) |
15% | 10% | 7% | 5% | 3% |
(3)人材確保等支援助成金 人事評価改善等助成コース
概要・受給額
・制度整備助成 50万円
事業主が、生産性向上のための人事評価制度と2 %以上の賃金のアップを含む賃金制度を実施・整備した場合に支給される。
・目標達成助成 80万円
1 年経過後に人事評価制度等の適切な運用を経て、生産性の向上、労働者の賃金の 2 %以上のアップ、離職率の低下に関する目標のすべてを達成した場合に支給される。
*どちらの要件も満たした場合、合計で130万円受給可能です。
受給要件
・申請日の1年以上前から雇用保険、社会保険に加入している。
・週40時間以上勤務の正社員がいる。
受給のための取り組み
制度整備助成
① 人事評価制度等整備計画の認定
人事評価制度等整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受けること。
② 人事評価制度等の整備・実施
①の人事評価制度等整備計画に基づき、制度を整備し、実際に人事評価制等対象労働者に実施すること。
目標達成助成
① 生産性の向上
人事評価制度等整備計画認定申請日の属する会計年度の前年度とその3年後の会計年度を比較した生産性の伸びが6%以上であること。
② 賃金の増加
整備した人事評価制度等の適用をうけた人事評価制度等対象労働者の賃金の額が、「人事評価制度等の実施日の属する前月」と「人事評価制度等整備計画の認定申請日の3年後の日の直前の賃金支払日の属する月」の全員分の賃金総額を比較したときに2%以上増加していること等。
③ 離職率の低下
人事評価制度等の整備・実施の結果、人事評価制度等の実施日の翌日から起算して1年経過するまでの期間の離職率が、人事評価制度等整備計画を提出する前1年間の離職率よりも、下表に掲げる目標値(※)以上に低下させること。
※低下させる離職率の目標値は対象事業所における雇用保険一般被保険者数に応じて変わります。
※ただし、評価時離職率が30%以下となっていることが必要です。
受給までの流れ
① 人事評価制度等整備計画の作成・提出
② 認定を受けた①の整備計画に基づく人事評価制度等の整備
③ 人事評価制度等の実施
④ 支給申請
・制度整備助成
【提出期間】
2%以上の賃金がアップするものとして整備した人事評価制度等に基づく賃金が最初に支払われた日の翌日から起算して2か月以内
・目標達成助成
【提出期間】
人事評価制度等整備計画を認定申請した日から3年後
⑤ 助成金の受給
・制度整備助成 50 万円
・目標達成助成 80 万円
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は3つの助成金をピックアップしてご紹介しました。
助成金、補助金には種類が多く、専門家でない方がすべてを網羅することは実質困難です。
しかしせっかく要件を満たしていても、申請しないと交付されるものも交付されません。
ご自身で調べるにも限界があるので、そんな時は専門家の方を頼ってみてはいかがでしょうか?
ご自身に当てはまる助成金はあるのか、まずは相談してみましょう。申請資料の作成、申請代行など行っている先生もおられます。
また下記のサイトで助成金や補助金の情報を随時発信していますので、どんな助成金、補助金があるのか、検索してみましょう!