今日は自戒の念を込めて…

先週初めにFashionsnap.comに取り上げられたこちらの記事

80歳縫製士が最後の挑戦、クラウドファンディングで”究極のシャツ”発売

Makuakeを見ると既に成功率280%を超え、このまま行けば300%超えは確実な感じです。
最後の仕事として「良いシャツを作り、お届けしたい」というロマンがあって良い話なのですが、1つだけムービーの中で「シャツの寿命は?」という質問に「体形が変わらなければ一生着られると思います」と答えられてました。
とは言え、着用頻度にもよりますが、保管環境が悪いと着なくても黄ばんでくるシャツを一生ものにするのは至難の業です。
私の週末のTwitterはそれで盛り上がっていました。

もう一つ。面白いと言ってはいけないかもしれませんが都市伝説のような話で

経営コンサルタントの河合拓さんのブログより
私が20年前にやった繊維産業のボーダレス化戦略が潰された理由

こちらの記事で

私は、日本の大手素材メーカーの方にイタリアの素材の技術について解説をしてもらいました。彼らは「イタリアの素材と日本の素材の大きな違いはエージングにある。イタリアは生産した生地を数年寝かし風合いをだして出荷するが、日本は生産したら直ぐに出荷する。だから、ワインと一緒で滑らかさが違うのだ」という説明でした。

実は、これは大嘘で、日本に二次情報や推測で、このような「嘘」や「神話」がまかり通っています。

皮はエイジングを楽しむものだ。という話は聞いたことがありますが、服地にもエイジングなんて初めて聞きました。

科学的根拠があるのか?ないのか?は分かりません。
それをする根拠はイタリアの素材メーカーさんのみぞ知るような状況ではありますが、河合さんのブログ内では「その方法なら理解できる」というお話は書かれていましたので、ぜひご一読してみてください。

話しは戻しますが、両方の話を見ていて感じたのは「盛り過ぎた話は誤解を招くということ」

シャツのムービーは編集されていたので、お母さんの「体形が変わらなければ一生着られると思います」の後には何か言葉が続いていたのかもしれません。見てもらいやすい長さに編集するために、物語をより印象的に見せるために編集されている訳でですが、その結果、誤解を招いています。

イタリアの生地も根拠のないエイジングが面白い、興味深いというだけで、日本の素材メーカーが誇張して触れ回っているだけだと思います。
作り手はあたり前、普通で特徴ないことを、物珍しがる方はつい盛り気味で語ってしまいます。
知らない人に伝えるために分かり易くするために選択した言葉が、違う意味に受け取られることもあるでしょう。
また、少しでも興味を持ってもらいたいが為に、キャッチーに書きすぎてしまうこともあるかもしれません。
そういえば、プレスリリースを読んでいると、キャッチーに書きすぎて、正確なことがよく分からないことが稀にあります。

私の場合は、一次情報提供者(取材対象者)に話しを聞き、書くことがほとんどです。
たからこそ、その方の気持ち、考え方をできるだけ正直に伝えたい。というのが信条です。
でも、より読み手に伝わって欲しいから少しだけ盛ることもあります。
その辺はご了承ください(笑)。

文章を書くにしても、写真を撮るにしても、盛り過ぎは注意ですね。
盛ってもいいけど、程々に。

ここだけの話、原稿出しても、自分が書いたのより盛られ誌面に掲載されることもあってびっくりするときがあります(;^_^A

この記事を書いた人

苫米地香織

日本で一番アパレル販売員を取材しているファッションジャーナリスト
販売員として働きだすが1年で挫折し、アパレル企画会社に転職。独立後は衣装制作、グラフィックデザイナー、ライターとして活動し、現在はファッション業界誌を中心に執筆。これまで取材してきたアパレル販売員は2000人を超える。