販売員の取材では必ずと言っていいほど「スタッフ育成」について、ほぼ必ず伺うのだが、一番よく出てくるシチュエーションは「最近の新人さんは手取り足取り、丁寧に教えることが大切」ということ。
話しを聞いていると、最近の新人さんはどんな業種においても「よく言えば素直。悪く言えば自主性や主体性がない」という印象なのかと思った。

そして、対比として出てくるのは「昔は先輩の背中を見て、仕事を盗んだのにね」という話だ。
多分に漏れず、私も「背中を見て仕事を覚えた世代」である。
高校時代にマクドナルドでアルバイトをしていたのだが、その頃のマクドナルドにはすでに立派なマニュアルが存在し、アルバイトもマニュアルに沿って仕事を覚えていく。しかし、私が入店した当時は店が色々な事情があって、一応はマニュアルベースで教えもらっていたが、細々とした仕事は先輩スタッフの仕事を見様見真似で覚えていた。

その後、専門学校卒業してすぐに入社した某インディーズブランドではどうだったか?と思い返すと、お店にはほぼ一人。まれに二人(とはいえ、それも休日くらい)。ほぼ一人で店番をしているので、接客を勉強するもへったくれもない。
一応、1年先輩もいたがほぼ同じ店で勤務することは無かった。
そうなると販売員1年目の私には仕事を覚えたくても見る背中がなかったのである。

どおりで仕事が続かなかったわけだ(笑)


photo credit: Ian Sane West End Girl via photopin (license)

仕事を覚えるために見る背中もなく、今でいうブラックな環境もあって、結局1年で販売をリタイアした私から見ると、今の新人販売員さんたちはとても羨ましい環境である。
今と同じような環境に入っていたら、また違った人生を歩んでいるだろうなと何度も思う。

販売1年生の皆さん、この春から販売始める皆さん。
会社に入ったら、良き先輩・こんな風になりたいと思える先輩を見つけて、まずは真似してみてみよう。
仕事ぶりも、ファッションも、ヘアメイクも、立ち振る舞いも。
例えば、仕事ならこの人、見た目ならこの人、と分けても良いかもしれない。
それが「背中を見て育つ」ってそういうことだと思う。

とことん真似をして、先輩と自分には違いがあると感じたら、それが「個性」というもの。
その「個性」に気が付いたらは消すことはない。むしろ伸ばしていくことで、先輩の真似ではない「自分らしさ」が作られる。

 

一方、見られる先輩方には、山本五十六のこの言葉を贈るわ。

やってみせ、言って聞かせて、 させてみせ、 ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、 任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、 信頼せねば、人は実らず。

山本五十六の名言 http://earth-words.org/archives/6742

一番最初の「やってみせ」がポイントよ。
まずはかっこよく仕事する姿を見せることね。

今更だけど…社会人・販売員1年目にそんな素敵に出会ってみたかったな。

この記事を書いた人

苫米地香織

日本で一番アパレル販売員を取材しているファッションジャーナリスト
販売員として働きだすが1年で挫折し、アパレル企画会社に転職。独立後は衣装制作、グラフィックデザイナー、ライターとして活動し、現在はファッション業界誌を中心に執筆。これまで取材してきたアパレル販売員は2000人を超える。