石川善光氏は、東京で自然療法を中心とした健康と美容を統合したクリニックを1993年に開業し、それ以前は英国でヘルスファームの自然療法科に勤務されていました。石川氏がいたヘルスファームは貴族階級の人たちしか入れない長期入院施設でした。
なので、世界各国の紳士淑女たちを診てこられました。その経験から気づかれたのが、欧州の紳士淑女は、年齢を重ねるごとに益々素敵になっていき、若い人たちからあこがれの存在になるほどです。姿勢や肌のつや、目の輝き、体型、健康状態、など本当に若々しく元気な方が多いのです。欧州では自然療法のプロが身近に存在し、個々にアドバイスを聞いて日常に活かしたり、メンテナンスの大切さを知ってケアを受けたりしているからだと考えられています。
欧州の病院には、自然療法科という薬以外の方法で治療を行う科が存在します。自然療法科を受診する患者さんは7割、現代医学を受診する患者さんが3割です。自然療法科では、ただ症状を診るだけでなく、カラダのコンディションから始まって食事内容、性格、家庭環境、職場環境、病歴、人生における出来事、ストレスの影響の度合い、姿勢分析、カラダのくせや動かしかた、睡眠など様々な角度からカウンセリングを行い、目に見える症状だけではわからない病気や症状の原因をさぐります。
症状を抑えるだけではなく、病気の原因を根本から治すための治療法を探し当て、薬で対処するのではなく、根本治癒させるための対策をとっていきます。自然療法科は、あくまでも自然に根本治癒させることをを目的としていますから、ケミカルな治療は行いません。生活習慣を改善することで治る症状ならば具体的にどのように改善すればいいのかをアドバイスしますし、薬が必要な場合は、ハーブなどの薬草やサプリメントなどを用います。
日本では栄養サプリメントはあくまで栄養補助としてとらえますが、実は根本治癒させるためには重要なものなんです。具合が悪くなるということはなんらかの以上が起きているということです。体内の必要なホルモンや物質の過不足が起きた場合、異常が発生するわけです。この体内物質やホルモンの原料は栄養素から出来ているので、必要な栄養素を与えてあげれば薬で抑えるよりも根本的な解決になるのです。
症状や患者さんのタイプによっては、現代医学の各科と自然療法科が話し合いをして、今後の治療方針や方法を決める場合もありますし、自然療法科の範疇ではない重篤な感染症や救急疾患、など症状によって内科など各科に移ってもらったりもします。逆に慢性的な生活習慣病や自律神経の乱れが原因などの症状は他の科から自然療法科へまわってもらうのです。
日本ではこういうシステムは無く、風邪は内科、腰痛なら整形外科というように、検診する科が始めから決まっています。しかも、内科で診てもらって薬をもらって終わりになってしまうことが多いのです。(ちなみに、欧州では風邪や腰痛は薬では根治しないため自然療法で診ます。)
けれども、欧州の病院では、自然療法科を設け、出来る限り、化学変化や副作用を起こさずにすむ治療を行うようにしています。もちろん自然療法でも治らない症状の場合だけは、投薬や手術といった方法がとられるのです。実際、欧州の薬の消費量は日本の3分の1以下で済んでいます。
美容についても実にうまいシステムになっています。英国にはビューティーセラピストという職業があります。肌のトラブルが起きたとき、日本なら皮膚科かエステにいくのではないでしょうか。しかし、肌のトラブルは、皮膚上の問題だけが原因とは限りません。
ホルモンバランスの乱れや内蔵や自律神経の影響で肌荒れを起こすこともありますよね。カラダはつながっているのです。英国のビューティーセラピストは皮膚科よりも化粧品の成分や特徴について深く学びます。しかも、皮膚だけを診るのではなく、カラダのつながりや体全体から肌を診ることが出来るのです。なので、よほどの皮膚病でなければ、皮膚科に行って薬をもらわなくてもいいように、ビューティーセラピストという職業が高いレベルで存在しているのです。もちろん教育資格制度が厳しい基準で儲けられていますので、カラダのつながりから心身を正常な働きにすることで美しくするということが可能なのです。
美容皮膚科や美容外科もアメリカを中心に、お隣の韓国でも非常に盛んですよね。しかし、欧州ではアジアやアメリカのように美容医療は盛んではありません。美容整形をしてまで自分の容姿を変えたいと思うのは心の問題ととらえているからです。
なので、美容整形外科は精神科や自然療法科とマッチングで設置されており、整形をしなくても心の病気を治すことで解決出来ないかを先に模索します。カウンセリングを受けて、本当に整形が必要かどうか判断されます。整形手術によってかえられる心の問題というものがあるからです。欧州の紳士淑女は、あくまでも自然に、健康的に美しくなることを一番に考えており、その上で若々しく美しくいられれば最高だと考えているのです。
メスで切ることや異物をカラダに入れることは、それだけでその周囲の神経や組織に負担をかけることになります。どんなに安全だといっても健康によいわけはありません。プチ整形のボトックス注射はボツリヌス菌を注射してしわになっている部分の筋肉組織を麻痺させてしわをとる方法です。たしかにしわだけをみれば消えているのですが、筋肉が麻痺することがカラダに本当によいことなのでしょうか?笑っても表情は全く動かないので血流は悪くなりますし、筋肉だって使われないのですから衰えてしまうでしょう。『木を見て森を見ず』と言いますが、本当の美しさは健康の上に成り立つのではないでしょうか。ヨーロッパの人々の多くは美容医療のリスクを良く把握しており、美しくなろうとして健康を損なってしまっては意味が無いと考えているのです。
最後に石川さんがイギリス時代に担当していたある伯爵夫人の言葉をご紹介します。
「人は時間とともに老化する代わりに、経験や知恵を得るのです。自然に老いるということはとても素敵なことだと思う。ただ黙って老いるのではなく、自分の能力を最大限に生かしながらというのが、私にとって自然に老いるということなのよ。」
ただ、皺が消えればいいとか、やせればいいというものではなく、もっと広い視野でエイジングを楽しんで、豊かな感性と前向きさを失うこと無く歳を重ねられたら素敵ですよね。