A.「採用試験の日程が【延期】された」 B.「採用試験の日程が【前倒し】になった」
あなたが受験者ならどう思いますか? 前者は「まだ余裕ができた、準備時間が増え、 試験に受かる確率があがりそうだ!」 後者はその逆。そんな感じがしますね。
でもちょっと視線を変えるとわかるのですが、 別に合格枠が増えたわけでは無いのに気持ちに余裕が生まれましたね。 それは、準備時間が増えたことはライバルも同じです。 競争の難易度は変わりません。 では、なぜ私たちはこんなイメージをもってしまうのでしょうか?
1. 「できそう」「やれそう」「勝てそう」が
裏切られる理由
2003年 アイオワ大学の ポール・ウィンズチトン(Paul D. Windschitl アイオワ大学心理学部)らの 研究チームは世界的に話題となる研究をまとめていました。
160名の学生を集めて、1対1の雑学クイズ試合を行います。問題は15題。 引き分けなしでどちらかが勝つまで行われます。
出題ジャンルは大きく2つに分けられています。
1)学生が得意そうな分野
人気のお笑い俳優の映画や漫画、ロックなど
2)学生が苦手そうな分野
19世紀のフランス絵画、東洋哲学、歴史の日付問題など。
さて、実験はここからです。 研究チームは被験者を次の2グループに分けました。
A)各ジャンルごとの【自分】の正解率を予想する B)【対戦相手】の正解率を予想する。
結果、次のような勝率になりました。
予想する全体の勝率 | |||
1. | 学生が得意そうな分野 | 自分 | 55.01% |
1. | 学生が得意そうな分野 | 相手 | 47.87% |
2. | 学生が苦手そうな分野 | 自分 | 24.78% |
2、 | 学生が苦手そうな分野 | 相手 | 56.98% |
明らかに、自分が得意そうななじみのある分野に対しては、もちろん自分が勝つと楽観視し 自分が苦手そうな分野に対しては自分は負けると悲観視しています。
2. ライバルとの競争に勝つキーワードは「淡々と」
これは本来、ナンセンスな現象です。 いくら自分が得意でも、 相手がそれ以上に得意であれば勝負には負けます。
逆もいえます。相手のことは分からない以上 考えるだけ無駄な話のはずです。
でも、この無駄を私たちはかなりやりがちです。 そのため、やる前から必要以上におびえたり、 逆にあなどったりして痛い思いをすることもしばしばです。
この心理作用を「状況共有効果」といいます。
自分の利益となる状況がおこると、 競争の結果に楽観的になり 自分に損失となる状況が起きると、 競争の結果に悲観的になるのです。 ライバルも同じ状況下にあることを忘れて。
研究チームによれば、 こうした現象の背景には 人間は一般的に自分の特性(強み・弱み)や 自分の都合の良い結果につながる要素に ばかり注目しがちである点をあげています。
そのため 「いける!」「勝てそう」「流行りそう」と ついつい軽い気持ちで乗っかってしまい後々後悔をしてしまうのです。
「もっと客観的になれ」と言われればそれまでです。
でも、どうやら私たちの脳は自分の想像以上にそれが苦手なようです。
何か打つ手はあるのでしょうか?
大切なことは、相手や世間との比較も 忘れるくらい長く自分のなかに 定着したものを持つことです。
試験日の例もそうですが、 結局はそれまで続けてきた経験ちが熟練度になり 結果に反映されるだけなのです。
「淡々」こそが競争に勝つキーワードです。 それは、多くのライバルを惑わす 「状況共有効果」からあなたを自由にし 100%結果にコミットさせてくれます。
気がつけば、ライバルの方が根をあげて あなたに勝利を譲ってくれることでしょう。
本日もお読みいただきありがとうございました。